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 同僚の赤葦さんとバレー観戦に来た。赤葦さんがバレーボーラーに知り合いがいると言うので、いいなぁと言ったら「今度観に行きます?」と言われ、チケットを用意してくれる運びになったのだ。男女で休日にお出かけという意味ではデートと言えなくもないが、今回はそんなものではないと思っている。

 試合会場に入った赤葦さんは、「ちょっと寄ってもいいかな」と出ている屋台を指さした。私は小さく頷き、赤葦さんの背を追う。

「相変わらず美味しそうですね。買い占めたくなるくらい」
「おひとり様ひとつまでやで?」

 赤葦さんの声に、高身長の店主はにやりと笑った。この慣れた様子を見るに、赤葦さんと店主は顔見知りであるのかもしれない。店主は私の存在に気が付くと、謀るような表情を浮かべた。

「今日はひと家族様ひとつまでにサービスしとくわ」
「ありがとうございます」

 まるで違法薬物のような様相で、赤葦さんはお気に入りだという天むすと鮭むすびを買った。私は別のものにした。二つも食べるところに、赤葦さんの胃袋の大きさを感じる。そういえば、赤葦さんも学生時代バレー男児なのだった。でも、店主がひと家族様一つと言わなければ赤葦さんは天むすを二つ買えたはずだ。私達は家族ではないのに、家族にカウントして購入数を制限するのではサービスにならない。

「一つしか買えなかったのに何でサービスなんですか?」

 私が尋ねると、赤葦さんは私の方を振り向いて小さく笑った。

「苗字さんと家族って名乗れたから」

 その言葉に、思わず家族の意味を考えてしまう。家族と言うほど仲が良い、という意味で使うには程度が大きすぎる。私達が男女であることを考えても、いきなり家族というのはやはり尚早である気がする。赤葦さんは席に着き、私におにぎりを差し出しながら言った。

「これからそうなれたらいいなって思ってる。まずはお付き合い、どうでしょうか」

 そのセリフと共に差し出されたものだから、私がおにぎりを受け取ったら付き合いを了承したようになってしまうと思った。おにぎりは赤葦さんの奢りだし、私が受け取らなければ赤葦さんが食べるだろう。でも、私は手を伸ばした。

「よろしくお願いします」

 半分くらいは、美味しそうなおにぎりを食べたかったから。もう半分は、赤葦さんに興味があったから。私達の付き合いは、おにぎりで始まった。