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「クリスマスの予定は?」

 カイザーに尋ねられた時、咄嗟に答えた言葉は嘘だった。

「バイト」

 私はブルーロックのスタッフの他に、街の喫茶店でもバイトをしている。喫茶店はブルーロックの近所だが、今までにカイザーが訪れたことはない。案の定カイザーは私を疑っていないようで、「なら仕方ないな」と引き下がった。とりあえず、カイザーとクリスマスを過ごすことは回避した。

 そう安堵していたのも束の間、クリスマス当日に私はカイザーの不在を発見する。今日は練習が既に終わっているので、カイザーがどこへ行こうがブルーロックのスタッフである私には関係ない。けれどどうしてか嫌な予感がして、私はバイト先の喫茶店に向かった。そこでは街の喫茶店を王宮のように感じる優雅なたたずまいで、カイザーが紅茶を飲んでいた。

「可哀想なお前のために今日は一日貸切だ。ほら、俺に給仕しろ」

 そう言う様子はまるで王様である。給仕しろと言うのもいかにも上から目線だ。棒立ちしていると、私に気付いた店長が駆け寄ってくる。

「苗字さん、今日シフト入ってくれるの!?」
「えーっと……」

 本当ならば、今日はバイトがない日だった。シフトに入ってもただ働きということはないだろうが、オフに仕事をするほど私は仕事が好きではない。けれど、仕事をしなければカイザーに嘘をついたとバレてしまう。

 迷っている私の元へ、カイザーが優雅に告げた。

「仕事をキャンセルして俺とデートするか? 好きな方を選べ」
「仕事します!」

 カイザーとのデートかバイトだったら後者を選ぶ。それは結局カイザーに奉仕をするということで、嫌な度合いで言ったら大して変わらないのだけど今は考えないでおく。