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「すまなかった」
月の明るい夜だった。マダラは一族の集落の中にある、私の家を訪れた。マダラが集落を訪れることすら、最近では珍しいことだった。マダラは千手と対立し、うちはの一族内部でも対立した。そして今日私の元を訪れたということは、里すら出て行く気なのだろう。
私はマダラが謝る意味をよくわかっていた。マダラは一族の長だ(正確には長だった)。自由恋愛などできるはずもなく、一族が勧める女と結婚した。マダラを好きな私の想いも、私を好きなマダラの想いも差し置いて。
そうして結婚したのに、結局一族に謀反する結果になったことに対して謝っているのだろう。結婚が決まった日、私に言えなかった言葉を。
「謝ったところで、今度こそ私と一緒になってくれるわけでもないんでしょう」
私はマダラの方を見ずに言った。反対を向いていても、月がマダラに落とす大きな影がよく見えていた。私はマダラを直に見る勇気がなかったのだ。見てしまったら、行かないでと懇願してしまいそうで。あるいは、一緒に連れて行ってくれと縋りそうで。
「なら何も言わずに行って欲しかった」
それは私の正直な想いである。中途半端に好意があるような真似をして、私に忘れさせずにいるくらいならば、過去の人として思い出になってほしかった。マダラはどうして私にこんな意地悪をするのだろう。
「最後にお前の顔が見たかった」
マダラの声がした時、私は遂に振り向いた。そうだ、その顔が見たかったのだとばかりにマダラは口角を上げた。次の瞬間には、影も残さずに消えていた。私の人生はマダラによって滅茶苦茶になった。でもそれは、出会った時から決まっていたことなのだ。
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