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化粧をしている時、冴の視線を感じた。男の人は自分がしない化粧に興味を持つと言うけれど、どうにも冴の視線は私ではなく化粧品そのものに向いている気がする。私が可愛くなっていく工程に興味があるわけではないらしい。
「お前そんなにブランド物の化粧品持ってたか?」
冴が発したのは、そんな言葉だった。冴と会う機会はあまりない。冴の目が離れている内にパパ活をしているか、あるいは他の男を作っておねだりしていると思われているのだろうか。私はこんなに冴が好きなのに。
「愛空くんがくれたの」
私は呆れつつ言った。元カノが置いて行ったからと、愛空くんが化粧品を貰ってくれないかと言い出したのは少し前だ。そのまま愛空くんが持っていると、今関係のある女の子達に疑われてしまうらしい。それらの化粧品は私がなかなか手の届かないハイブランドであったし、私は有難く受け取ることにした。しかし、冴はそれを気に入らないようだった。
「化粧品が欲しいなら俺が買ってやる」
私が引こうとしていたリップを奪い取る。私が振り向くと、冴は存外怒ったような顔をしていた。
「他の男の色に染まってんじゃねぇよ」
別に男の人にリップを貰ったからと言ってその人の色に染まるわけではないのだけど、冴の中ではそうではないらしい。これは紛れもなく嫉妬だ。冴の表情に反し私がご機嫌でいると、冴はますます機嫌を悪くした。その後のデートが化粧品カウンター巡りだったのは、言うまでもない。
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