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「昨日は昔の同級生の男に連絡して、何かあったの?」

 当然のように南雲さんが尋ねてきても私は驚きやしない。殺し屋をしている南雲さんが、一般人の私のスマホのロックを解除して中身を見るなんて造作もないことだろう。彼はしきりに男と連絡をとることを気にするが、彼女である私に異性の連絡先を削除するようには言わない。そういう意味ではまだ、束縛は緩いほうなのかもしれない。

「別に大した用じゃないよ。留守電だったし、何なら今ここで電話してもいいよ」

 南雲さんを不安にさせたら何が起こるかわからない。彼が情緒不安定になっているところなど想像つかないが、今より酷い束縛をされることには変わりないだろう。

 私は大したことのない用だと証明するために、昨日留守電を入れた男に電話をかけた。すると南雲さんの鞄から着信音が鳴った。ぴったりのタイミングだった。

 まさか、と思いながら他の男の連絡先に発信する。頭では悪い想像が働いており、それが真実なのではないかと薄々勘付いている。だけどそれを信じたくない自分がいる。

 またしても南雲さんの鞄から着信音が鳴った。今度は違うメロディで。私は想像を確信に変える。南雲さんは私の異性の連絡先をすべて自分のものに書き換えており、その連絡先の分だけ携帯を契約していたのだ。そして、あたかも私の友人であるように連絡をとっていた。

「僕が他の男と連絡させると思った?」

 そう言う南雲さんは笑顔なのに怖かった。連絡先を勝手に消されるより、友人を振る舞って連絡をとっていた方が恐ろしい。ある意味南雲さんにしかできない芸当だ。私は一生南雲さんから逃れられないのだと覚悟した。