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 ブルーロックにも正月休みというものはあるようだった。漸く返されただろうスマホに「帰省どうするの?」と送れば、「名前が来るなら帰る」と返信が来た。私は思わず苦笑いをする。冴に苦手意識があるのは相変わらずのようだ。

 とはいえ、息子二人が年中家を空けていておじさんやおばさんは心配していることだろう。私は凛を帰省させるべく、凛の帰省に付き合うことにした。糸師家に全く関係のない私が一緒に帰って来たことに、おばさんは案の定驚いたようだった。

「凛、久々に帰ってきたと思ったら名前ちゃん連れてきて……付き合ってるの?」
「そうだ」
「そうじゃないですから! 冴のためですから」

 凛と冴が気まずくならないための緩衝材のような存在として、私は連れられてきた。冴は凛に話しかけられれば普通に答えるような気がするけれど、凛はそうではない。

 すると玄関へ、ひょっこりと冴が顔を出した。いつもハイブランドを着こなしている冴の部屋着姿にほっこりとする。

「俺のため? 俺に会いに来たのか」
「えーと……」

 冴だって凛に複雑な感情を持たれていることは気付いているだろうが、面と向かって凛が冴と二人で会いたくないから連れられてきたと言うのは憚られる。

「そうだよ」

 ここは適当に嘘をついておこう。もう何年も海外にいる幼馴染に会いに来たとて、不自然ではないだろう。そう思って発言すると、言い終わらない内に凛が割り込んでくる。

「んなわけねぇだろ。お前の初恋の人を奪ってやったんだよ」
「さっき付き合ってないって言ってなかったか」
「これから奪う」

 私は情報の波に揉まれていた。冴の初恋が私だなんて知らなかったし、気付けば凛も似たような感情を抱いていることになっている。それが凛の本心なのか冴への対抗心なのかはわからないが、冴と凛と糸師家に帰省している現在において厄介なことは間違いない。

「名前、付き合ってくれ」

 両親と実の兄の目の前で行われた凛の告白に、私はどう答えればいいのだろう。冴は凛と違って逆上することはなさそうだけど、先程から視線が痛いほどに突き刺さっている。今年最後の難関は、今この瞬間だ。