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ブルーロックにも正月休みがある。各選手が帰省する中、年末を一緒に過ごす家族もおらず、帰省自体面倒だというカイザーは私の家で引き取ることにした。狭い1Kの中心にあるこたつに二人入り、そばをすする。カイザーにはこれが日本文化と言ったのだけど、どうにも受け入れがたいようだった。
「おい、そのヌードルハラスメントをやめろ」
カイザーは眉をしかめた。そう言うカイザーはと言えば、先程から殆どそばをすすれていない。何でもスマートにこなしそうなカイザーの、そういうところを可愛いと思ってしまう。
「カイザー水音好きなのに」
「どう翻訳されているのか知らないが俺が言いたいのは麺をすするなということだ」
カイザーが水音を好きなのは事実だ。私と体を重ねている時、結合部で愛液が泡立つ音がするとカイザーは興奮した表情をする。それを引き合いに持ち出したのだが、カイザーは翻訳イヤホンの不調だと思ったらしかった。御影コーポレーションは悪くない。珍しく弱いところを晒しているカイザーをいじめたくなってしまう。
「私には水音をやめろって聞こえたよ?」
「そんなの言った覚えはない。お前の出す水音は好きだ」
そういうところを照れなくさらりと言えてしまうところがカイザーたるゆえんだと思う。私は再び丼に向き合い、そばをすする。
「じゃあラーメンもそばも我慢して」
「それとこれとは話が別だ」
カイザーはまたそばをすすれず、箸で小刻みに口へ運んでいる。今いじめた分、もしかしたら深夜になって私がいじめられてしまうのかもしれない。けれどカイザーをいじめられるなんてことは早々ないのだから、たまにはいいだろう。私が派手にそばをすすると、カイザーの額に青筋が見えた。これは夜、覚悟しないといけないかもしれない。それにも期待してしまう私がいる。
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