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高校時代から付き合っているとなれば、もう大抵のイベントは十周目近くになる。元旦や初詣もその一つだ。聖臣は人混みに行くことをあまりよく思っていないみたいだったけれど、私が行きたいと言ったらついてきてくれた。アスリートとして活躍する聖臣のために、願いを込めて。
「聖臣のために神社選んだんだよ」
関東でも有名な神社を前にして言うと、聖臣は信じられないという顔をして私を見た。
「お前……ここの神社の意味知ってて誘ったのか?」
「勿論」
私は健康祈願で有名な神社を調べて今いる神社に辿り着いたのだ。アスリートに怪我や病気は禁物である。聖臣がこれからもずっと大好きなバレーをできますように、と祈るために、年越し前から下調べをしてきた。ただでさえ高身長で目立っているというのに、聖臣は人目も憚らずに私の両手を包んだ。
「俺、これからもっともっと働く。バレーができなくなったって、死んでもお前達のために働き続けるから」
「待って、バレーができなくなったらって?」
私は聖臣がバレーをし続けられるために健康祈願の神社を選んだのだ。それが何故できなくなった時の話になっているのだろう。仕事の大成を叶えるような神社でもない。
聖臣は何を言っているのだとでも言いたげな表情で神社の入り口を指さした。
「ここは安産祈願で有名な神社だろ?」
私の体に戦慄が走る。そういえば、マタニティーマークを付けた人が多いとは思っていた。私がよく見ていなかっただけで、健康祈願の中でもお産にまつわる神社だったのだ。聖臣の方が神社仏閣には詳しいようだ。
「俺、二人のために努力する」
まるでプロポーズをした時のように、聖臣は私の両手を握った。一体どうしたらいいものだろうか。私は妊娠などしておらず、ただ聖臣の健康祈願に来たとは言いだしづらくなってしまった。聖臣はもうすっかり父親になった顔である。ここで実は子供などいませんと言おうものなら、では作ろうと新年早々寝室に引きづりこまれそうだ。期待させたのは悪かったが、子作りはもう少し計画的に。今にも安産祈願のお守りを買いに行きそうな聖臣の隣でそう思った。
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