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 佐久早と付き合って数か月が経った。佐久早はいつも部活で多忙だから、今回が初デートだ。その行先を決めるにあたり、私が一番に思い浮かべたのは佐久早が苦手とすることだった。

「人気がない所! 人のいない所に行こう」

 佐久早は人混みを極端に嫌う。遊園地、水族館などめぼしいデートスポットは殆ど人で混雑している。私達のデートが普通でなくてもいいから、佐久早に負担をかけたくない。そう思うくらいには、私は佐久早を大事に思っていた。友達でいた期間の方が長いから、それが恋愛感情によるものかはわからないけれど。

「例えば?」

 佐久早に聞かれて、私は頭を捻る。

「うーん……家とか……」

 そう言うと、佐久早は意外にもすんなりと承諾した。やはり佐久早はデートらしいデートが嫌いなのだろう。彼女らしいことをしてあげられたような誇らしい気持ちだ。

 得意げに迎えたデート当日、他に人のいない私の家で佐久早は私を押し倒した。目の前には無表情な佐久早の表情がある。やはり家に誘うということは、そういう風に捉えられてしまうのだろうか。私は佐久早に配慮しただけだったのに。

「今日全然そういうつもりじゃななかったから下着が……」

 私が往生際悪く逃げようとすると、佐久早は呆れたように目を細めた。

「お前が誘ったよな」

 確かに誘った。けれどそれは家にという意味で、セックスの誘いをしたわけではない。

「あれは佐久早が人混みダメだから気を遣ったんだけど」

 私が言うと、佐久早は不本意だと言うように眉間に皺を寄せた。

「俺はお前のためなら人混みくらい我慢する」

 なんとなく、私はまだ友達感覚が抜けていなかった。そう実感してしまうくらい、佐久早の言葉は私に対する恋愛感情で溢れていた。感動している間もなく、もう一度ベッドに押し倒される。

「てことで今日はお前が我慢しろ」

 何と言う横暴だろうか。そういえば佐久早にはそういう所があった。今日私が冴えない下着を見られることを我慢したら、次回佐久早は人混みを我慢してくれるだろうか。それはやってみないとわからない。