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 主将、副主将、マネージャーで部の会議をしようということになった。多分それは言い訳で、木兎さんがオフの日の暇を潰したかっただけだと思う。曲りなりにも先輩兼主将であるので文句は言えず、私達は放課後学校近くのファミレスに集まった。木兎さんは早速ステーキを頼み、嬉しそうにがっついている。主将達で話し合うために集まった名目はすっかり忘れているようだ。私も注文したカレーうどんに手を付けようとする。その時、赤葦が隣から制止するように手を出した。

「ちょっと待って」

 今更部の話し合いをするつもりだろうか。そうだとしたら、うどんが伸びてしまう。私は今更カレーうどんを頼んだことを後悔した。しかし赤葦の意図はそうではないようだった。

「ほら。汚れるから」

 赤葦は鞄から朝練で使ったジャージを出し、私に着せてくれた。ジャージのファスナーを閉めるおまけつきだ。その手つきは母親が幼子にするような場面を思い起こさせるが、私達は同級生であり、男女である。

「赤葦って誰にでもこういうことするの……?」

 私は白のワイシャツを着ていたが、それにしても思わせぶりすぎる。赤葦が誰にでもこうなら罪な人だ。

「しないね。木兎さんは俺よりサイズ大きいから」

 そういうことを言っているのではないのだけど、と言おうとした時、赤葦は小さく笑った。

「他の理由がよかった?」

 赤葦に釘付けで、カレーうどんが伸びていることなど頭から消えていた。目の前には木兎さんが音を立ててステーキに食らいついているのに、赤葦のせいで私達二人きりのような錯覚を起こす。

「多分、女子ならやるのは苗字だけだよ。洗濯して苗字の匂いにしてくれるの、楽しみにしてるから」

 赤葦はそう言って自分が頼んだ定食に手をつけた。私は赤葦の匂いに包まれながら、恐る恐る箸を持つ。好きだと言われているようなものだけど、好きだと言われるよりもずっと胸がときめいた。