▼ ▲ ▼
アドラーズバレーボールチームでは、自社以外のバレー選手をチェックするのも重要な仕事の一つである。月刊で発行されているバレーボールマガジンをめくっていると、名だたる選手が理想のデートプランについて答えていた。最近はアスリートにもアイドルのような目を向けられることがあるので、そういう需要に答えた企画だろう。
「影山君ならランニングとか書きそう」
私が独り言をこぼすと、隣で座っていた影山君が上から雑誌を覗き込んだ。上背があるので目を動かすだけで済みそうだ。
「流石に書かないですけど、俺もこの企画回ってくると思うので考えないと」
そういえば、来月アドラーズにこの雑誌の取材の予定が入っていた。影山君はランニングと書かないと言うが、それ以外の答えを言えるとは思わない。実際に彼女と行った場所を答えるのも生々しくてNGだろう。こういう場所に見合った模範解答が必要なのだ。
「ありきたりだけど水族館とか? バレー観戦は誰か他の人と被りそうだよね」
バレー一筋で愛想のない影山君が誤解されないために。案を出す私に、影山君はどうでもよさそうに飲み物を一口飲んだ。
「何でもいい」
「もっとやる気出さないと」
雑誌の企画だって地道な努力である。こういう場所からファンが増えれば、影山君の人気だってさらに上がるかもしれない。影山君は飲み物を置き、もう雑誌に興味はないように手元を弄っていた。
「苗字さんとなら、どこでもいいかなって」
どうしてそこに、私の名前が出るのだろう。呆ける私を見て、影山君は言葉を足した。
「すみません、苗字さんと行く前提で考えてました」
私は話を振っただけで、デートに行こうと誘ったわけではない。けれど、影山君にとって私はデート相手として想像するほど「アリ」なのか。他の選手達がちらほらと姿を現す。影山君は立ち上がって、最後に私を見て言い残した。
「苗字さんの行きたい所を教えてください。雑誌には、それで答えておきます」
雑誌を見る人は多い。私の答えが影山君の印象を決めてしまうのだという緊張感以上に、私とのデートでいいのだろうかという気持ちが勝つ。先程本物の彼女とのデートを企画で答えるのは生々しくてNGだと言ったけれど、私は本物の彼女ではないからいいのか。でも、デート相手に影山君が想像する相手なら好意があるからNGなのか。
他に気にすることはもっとあるだろうに、私は私の決めたデートプランが雑誌に掲載していいかどうかばかり考えていた。多分家に帰ったあたりで、影山君から匂わされた好意に動転するのだろう。選手の見栄えばかり気にしてしまう、これもまた職業病だ。
/kougk/novel/6/?index=1