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 凛と夏祭りに来ていた。凛から誘われたわけではない。しかし、夏祭りの日に凛が私の家を訪ねた時点で私は行かなくてはならないと思った。凛が言いづらいだろうその言葉を、私は言った。私達は浴衣も着ず、普段着そのままに神社を訪れていた。

「かき氷のシロップって全部同じ味らしいよ。でもブルーハワイはブルーハワイだけどね」

 先程から少ない会話を盛り上げるように私は話す。もしかしたらこの話題は、余計に盛り下げてしまうかもしれない。凛はイチゴ味のかき氷をスプーンで混ぜる。

「見た目が違っても味が同じものが違うものなら」

 凛はそこで言葉を切った。顔は上げない。ただ遠くの喧騒と、かき氷が咀嚼される軽い音が響いている。

「見た目が同じでも中身が違うものを違うものだと思ってくれるのか」

 それが冴と凛のことであることはわかっていた。凛は核心に触れたのだ。凛が私を誘いに来たことも、言葉少なに祭りを回っているのも、全部私が好きだからだとわかっていた。好きになられた負い目があるからこそ、私は凛の思うようにことを進めた。一緒に祭りに行こうと言えない凛の代わりに私が誘い、会話をもたせた。私を好きでいてくれる凛のために良心でやっているような気持ちで、決して凛に対する特別な感情があるわけではなかった。けれど、しょげる凛を見ていたら凛に気があるようなことを言ってしまった。凛に恋愛感情を抱いているわけではないのに。

「凛と冴はものじゃないよ」

 私が言うと、凛は目を輝かせて私を見た。期待しているような目だった。

「……姉ちゃん」

 今まで冴の真似をして私を下の名前で呼んでいたのに、昔の呼び方に戻っている。凛は両思いだと解釈したのだろう。私は凛を好きではないはずなのに、まあそれでいいかと思っている。私がやっていることは、あるいは慈善事業で、あるいは最悪なのかもしれない。冴に片思いをしている私を凛がどのような目で見ていたか知っているから、応えたくなってしまうのだ。

 距離を詰めるように、凛が私の肩に手をかけた。近付く唇を感じながら、冴が私達を見たら何と言うだろうな、と思った。