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 ディナーを食べた後、川沿いの道を歩いていた。先程から侑はどこか落ち着きがなく、何かを待っているようであった。その理由は数分後に判明した。侑はプロポーズをするつもりだったのだ。

「喜べ。他の男なら浮気されても自分で追わんとわからんけど、俺ならいつでもマスコミがついとる。俺と結婚するのは世界一安全や」

 指輪を差し出されたわけではないが、夜景が川に反射してきらめく様子はなんともロマンチックである。侑らしく、プロポーズの雰囲気を出しているようだった。その言葉が奢り高ぶったようであるのも、また侑らしいと言えた。

「それって浮気しない人を選べばいいだけだよね」

 私が一つ、侑に反論すると侑はぎくりと身を固める。浮気してもすぐに嗅ぎつけられるから安全、と侑は言うが、何故浮気をする前提なのだろう。

「あと女遊びのイメージがついてるからマスコミに張られるんだよね」

 侑が目をそらしているのが見える。私とて侑のプロポーズを断りたいわけではない。だが侑の軽さには前々から鬱憤を溜めていたし、一生に一度のプロポーズが上から目線なのは少しいただけなかった。

 侑は作戦失敗とばかりに肩を落とした後、小さな声で呟いた。

「結婚してください…….」
「よし」

 夜景を前に格好つけているより、こうして叱られた犬のようにしょげている方が素直な侑らしい。そう思う私は、かなり侑のことを知れているのだろう。

「よっしゃああ!」

 途端に調子をよくした侑を見て、私は眉を下げた。