▼ ▲ ▼

 カイザーに夜の誘いをされた。私とカイザーは付き合っているし、誘い方もカイザーらしいきざなものだ。通常何らおかしくはないのだが、カイザーについてある情報を聞いてからでは不思議に思う。

「カイザーってお誘いとかするんだ」

 私が言うと、カイザーは自ら作ったキメ顔を崩して眉を上げた。

「は?」
「前科あるって言ってたから、レイプかと」

 カイザーには前科があるらしい。それを聞いたのは、カイザーのチームメイトからだった。彼はカイザーを嫌っていて、カイザーへの嫌がらせで言ったのかもしれないが私は特段気にしていなかった。口も素行も悪いカイザーのことだ。前科があると言われて納得してしまうくらいには、彼は見た目に似合わず粗暴な人間だった。付き合う前から私を何度も何度も口説く様子からして、前科の内容は性犯罪なのだろうと思っていた。

「俺の前科は強姦じゃない、窃盗罪だ」

 カイザーは不服だとばかりに申し立てた。窃盗罪も立派な犯罪なのに、堂々と言うことだろうかと思ってしまう。

「じゃあ私の同意がなければしないんだね」

 とりあえず、カイザーは盗みをするがレイプはしない人間であるということだ。それも交際相手となれば、余計丁寧に接するに違いない。

 先程不本意だとばかりに強姦を否定したカイザーのことだから、これも堂々と答えると思っていた。だが、カイザーは目をそらして小声で言った。

「それはわからん」

 同意がなくてもすることがあるらしい。それがカイザーの粗暴な人間性ゆえなのか、彼女である私への甘えなのかはわからないけれど、とりあえず気を付けなくてはいけない。アスリートであるカイザーに、私が力で勝てるはずもないのだから。