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 今日は人生の中で結婚の次に、もしかしたら一番にめでたい日だ。聖臣はどんな顔をして入ってくるだろうか。私は今日会社が休みだが、聖臣はトレーニングがあった。そのため私は家で聖臣を待つ形になったのだ。あのクールな聖臣が、緩んだ顔をして帰ってくるかもしれない。LINEには「家で話そう」とだけ返信が来ている。心を弾ませながら聖臣の帰宅を待てば、見えたのは仏頂面だった。

「妊娠報告をLINEで済ませるとかありえないんだけど」

 子供ができたことを祝うでもない。これから子供を十カ月育てていく私に感謝を述べるでもない。聖臣の第一声は、不満だった。

「すぐに伝えたかったんだもん」

 妊娠報告は大事なことだから、できれば口頭で伝えた方がいいとはわかっている。けれど私は初めての妊娠に浮かれていたし、聖臣にすぐ伝えないと偶然出会った誰かに言ってしまいそうだったのだ。やはり一番に伝えるのは、聖臣がいい。

 その思いとは別に、聖臣が言える立場でもないだろうと思った。聖臣はクールでシャイであり、大事なことをLINEで済ませた。

「聖臣もLINEで告白したじゃん!」

 私が言うと、聖臣は「それはただの告白でしょ?」と返した。もう十年近く前の話だし、妊娠報告に比べれば小さなことだ。けれど私達を繋げる、重要なことであったはずだ。

「『ただの』? そんなに軽い気持ちだったの?」

 私がこう出れば、聖臣は引き下がらずにいられないことはわかっていた。聖臣は私を正面から抱きしめ、顔を肩に載せた。

「嘘。大好き。愛してる」
「その結果子供ができました」
「ありがとう」

 私が予想していた妊娠報告のやりとりはこれで果たせた。これに免じて、先程までの不機嫌な態度は許してあげよう。聖臣にどうしても一番に伝えたかった私の思いもわかってほしいところである。私だって聖臣を、愛しているのだから。