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 一月の終わり、ブルーロックには短い休暇があった。それぞれが実家へ帰り、羽根を休めてきたのではないだろうか。ブルーロックへ再び戻って来た選手達は、どこか晴れやかな表情をしている。休みの間に乱れた食生活をしていないかのチェックからだと意気込んだ私を、引き留める影があった。

「チョコ、受け取ってくれますか」

 ブルーロックナンバーワンの糸師凛だ。彼は一人で何でもしてしまって、特にお世話をした記憶はないのだけれどお礼のつもりだろうか。手にはチョコが握られている。私は職員で彼らと違い寮内での食事が自由といえど、本来ブルーロックに食べ物は持ち込み禁止だ。

 とはいえ、折角お土産を買ってきてくれたのに断るのも忍びない。

「特別だからね」

 私はチョコを受け取り、一人でこっそり食べた。見た所糸師くんは私にしかチョコを用意していないようだし、絵心さんにバレたら何か言われそうだ。

 意外と可愛い所もあるではないかと思いながら翌日糸師くんに挨拶をしようとする。向かいからすれ違ったはずの糸師くんは、私の服の裾をぐいと引っ張った。

「おい、何してんだお前。俺の女なら隣歩け」
「俺の女?」
「俺はお前の特別なんだろ」

 一瞬、何を言っているのかわからなかった。そもそも私と糸師くんは職員と選手という関係性だし、この数日で距離感が近付くようなイベントもなかった。思い当たるとすれば、チョコを貰ったことくらいだ。

 その時、私は今月が二月であることに思い至った。チョコレート。あれは逆バレンタインだったのだ。「特別に」受け取ってしまった私は、糸師くんから見れば告白をオーケーしたに等しいのだろう。それにしても、だいぶ飛躍した発想だけれど。

「あれは飲食物持ち込み禁止だけど特別にオーケーって意味で……」

 私は言い訳をするが、糸師くんは聞いてくれない。

「どっちにしろ特別なら同じだろ」

 この、若さゆえの無敵感。糸師くんは私の腕を掴み、堂々と廊下を歩いた。私は絵心さんに何と言い訳をするかばかり考える。せめて付き合うのはブルーロックが終わってからで、なんて考えている私は糸師くんにもう気があるのだろうか。