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「大倶利伽羅! 内番お疲れ!」
「ああ」
「疲れた? お茶でも飲む?」
「別にいい」
本丸を歩いていた大倶利伽羅を、待ち構えていたというように審神者は出迎えた。息をつく暇もなく話しかける審神者に、大倶利伽羅は必要最低限の返事のみだ。それが大倶利伽羅だと言えばそうなのだけれど、少しくらい審神者に合わせて会話をしてやっても罰は当たらないだろうと思う。はたから一部始終を見ていた加州は、足早に去って行った大倶利伽羅に近付いた。
「何で主にそっけないの?」
「あまり話したら好きだと知られる」
加州は開いた口が塞がらない。クールな大倶利伽羅が恋をするのも意外だし、それをさらりと口にしてしまうのはもっと予想できなかった。
「俺その感覚わかんない! 主には知られたくないけど俺にはいいの!?」
どこで何を恥ずかしがっているのか。審神者が大倶利伽羅に気があることは見ていれば明らかなのだから、素直になればすぐ結ばれる運命だろう。加州にだけ話すと言われるほど本丸内で仲が良いわけではない。
「ああ。お前が言ったところでどうせ主は信じない」
大倶利伽羅の言葉に、加州はむっと口を閉じた。まるで自分の言葉だけに意味があり、加州の言葉はそうではないとでも言いたげだ。加州は審神者を恋愛対象として見ているわけではないが、近侍として長らく仕えている。
「俺と主の絆、舐めないでよね」
その涼しい表情が崩れる所を見てやろうではないか。結果として大倶利伽羅の恋が実ってしまうのは、少し悔しいけれど。加州は執務室へ向かって歩き出した。想い人と両思いだと気付いた瞬間の審神者の可愛い表情を、大倶利伽羅は見られない。そう考えたら少し面白い気分だ。
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