▼ ▲ ▼

 私のバレンタインは、一緒に告白を済ませるであろう同年代の女子と比べたら気楽なものだった。私がチョコを贈る相手の清峰くんは、部活のため摂取するカロリーを制限している。告白どころか、チョコを受け取ってもらえることすらないのだ。私は思い出作りにチョコをあげる動作をするだけである。それでもやはり、緊張はする。

「バレンタインチョコ、よかったら」

 清峰くんを廊下に呼び出して、包みを差し出した。どうせ受け取ってもらえないとわかりつつも丁寧に作ったチョコレート。清峰くんは、ごめんと言うに決まっている。もしかしたらありがとうも言うかもしれない。

「圭に食べていいか聞いてみる、断られてもこれだけは食べられるように頼んでみる」

 しかし清峰くんが口走ったのは意外な言葉だった。彼は、私のチョコを食べられるように画策してくれているのだ。それがどうして要くんに聞くことになるのかはわからないが、清峰くん以外の人を巻き込むとなると話が別だ。

「そしたら私が清峰くん好きなの要くんにバレちゃうじゃん!」

 もう呼び出した時点で私が清峰くんを好きなことは枯れにバレているだろう。開き直ってそう言うと、清峰くんは動揺したように口に手を当てた。

「友チョコ……じゃないのか……?」

 清峰くんは、私に好かれていることに気付いていなかったらしい。動揺しているのは私も同じだ。

「清峰くんこそこれだけはって……」

 他にもチョコを貰っているだろうに、まるで私のチョコが特別であるような言い方をする。特別なのは、私のチョコではなく私なのかもしれない。

 もしかしたら。もしかすると、私達は両思いだ。それをどうやって言葉にするべきか、今考えている。