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 この時期の購買には、願掛けめいたお菓子が並んでいた。「好きな人と同じクラスになれるかも!?」ピンクのパッケージには大大しくそう書かれている。よくもまあ、これほどに浮かれた商品を白鳥沢が許可したものだ。

 私は購買に並びながら、前にいた牛島くんに話しかける。

「牛島くんは買わないの?」

 こういう悪戯めいた会話をしても怒られないと思うほど、私と牛島くんはこの一年間で距離が縮まったと思う。昼休みに私はお菓子やデザートを、牛島くんはプロテインを買いに並ぶだけの仲だったのが、いつの間にか友達のようになっていた。

「買ってもどうせ意味がない」

 牛島くんは冷静に返した。単にそういうお守りのようなものを信じていないのかとも思ったけれど、彼の言い方では好きな人がいないのだろう。私は少し残念に思う。牛島くんに好きな人がいたら、知りたかったのに。

「金や時間は効くかわからないものより有効に使う。苗字、昼休みは暇か」
「暇だけど……」
「なら一緒に過ごそう」

 私はどうしてこの話の流れで昼休みを一緒に過ごすことを誘われているのかわからなくなった。一人が苦でない者同士、購買で買ったものを一緒に並んで食べたことはある。けれど、今日はそれ以上の――おひとりさま同士として過ごすのではなく、二人で過ごそうと言われているみたいだった。

「どうせ同じクラスになれないなら、その菓子にかける金をお前にかける」

 私は牛島くんが言いたいことを漸く理解した。私は普通クラスで、牛島くんはスポーツクラスだ。いくら願掛けを買っても、同じクラスになることはない。だったらお菓子を買わずにそのお金や時間を私に直接かけようということなのだろう。ちょっと直接的すぎる気もするが。

「お金はかけなくていいから!」

 お小遣いで生活している者同士、奢らせるような真似はしたくない。私がそう言うと、「なら外で並んで話そう」と牛島くんは言った。この季節に外に長時間いることは牛島くんにとって何の苦痛でもないようだ。彼には分厚い筋肉がある。軟弱者の私は、空き教室かどこかを提案させてもらおう。それが牛島くんの好意への答えだととられても、まあいいか。