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 私が数独の懸賞に応募したのは南雲さんが雑誌で解いているのを見てのことだ。一人の時にしかしないのか、最初は見られることを忌避していたようだがその内私の前でも堂々とするようになった。解き終わってはすぐに雑誌を捨ててしまう南雲さんを見て、もったいないからと応募したのが数か月前のことだ。今、私が適当に応募したお掃除ロボットは新品の状態で私たちの前にある。

「こういうのって当たるんだ〜。応募したの名前ちゃんだから、名前ちゃんが使っていいよ」

 南雲さんはやはり解くこと以外には興味ないようで、お掃除ロボットを私に寄越す。けれど私が出したお金と言えば、はがき代の数十円くらいだ。

「解いたのは南雲さんでしょう」

 私が言えば、南雲さんは意味ありげな視線を寄越した。

「じゃあ間をとって二人で使う?」

 これが消耗品ならまだ二人で共有できたかもしれない。だが家電製品をどうやって共有するのだ。その答えを南雲さんは示した。私は、南雲さんの部屋に居候することになった。

「男とか連れ込んでもいいよ。その代わりセックスは見学させてもらうけど」

 そう言われて連れ込む人がいるだろうか。遠回しに連れ込むなと言いたいのかと思ったが、南雲さんはあくまで私のセックスに興味があるようだ。

「南雲さんは私を恋愛的な意味で好きではないですよね」
「うん」

 何の感慨もなく即答される。私も特に、そのことに対して何も思わない。

「じゃあセックスくらい認めてほしいんですが……」
「それはダメ。名前ちゃんがどういうセックスするかは興味ある」

 好きではないのにセックスには興味がある。この関係性をどう表せばいいのだろう。もはや普通に好かれた方が楽だったかもしれない。いや、南雲さんのことだから絶対に面倒そうだ。

「じゃあ普通に南雲さんが抱いてくれませんかね?」

 同棲を受け入れた時点で、一回くらい致すことは覚悟している。私がそう言えば、南雲さんは「部下と関係持つの面倒だから〜」と笑顔でかわした。手には相変わらず数独の雑誌がある。南雲さんに数独に没頭する姿を見せてもいいと思われた時点で、私は既に彼の特別になっていたのかもしれない。こんな特別、なっても嬉しくも何ともない。私の今後数カ月の異性関係は、大分希薄なものになりそうだ。