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轟くんの自室にて二人で会うこと一時間が過ぎた。最初は開いていた教科書も閉じ、向かいにいたはずの轟くんは今私の隣にいる。二人の手が触れようかという頃、覚悟を決めたように轟くんがぎゅっと手を繋いだ。
「俺はセックスをしたい。お前はどう思うか」
私達は確実にいい雰囲気、だった。過去形なのは轟くんがあまりにも英語の教科書のような発言をするからだ。こういうのは雰囲気で察するものではないのか。少なくとも、私は自分の口から言うことに抵抗がある。
「流れで察してよ」
私が言うと、轟くんは表情を崩さないまま答えた。
「同意が大事だって習った」
「いつ?」
「男子が補習受けた時あっただろ、あれ峰田のせいで性教育の授業だった」
思わず目を細める。峰田のセクハラは言わずと知れた悪行だ。そのせいでA組の他の男子達にも被害が及んでいたらしい。峰田め、と思わず恨みを向けたくなる。
「それ女子にバラしていいの?」
話をそらそうとするも叶わず、「それでどうなんだ」と振り出しに戻される。
「性教育の授業で習ったから、やり方は知ってる」
期待と興奮の入り混じった瞳で言う轟くんは、セックスの詳しいやり方を知らなかったのかもしれない。だとしたら、私は峰田に感謝しなくてはいけないのだろう。果たして性教育の授業でどこまで奥深く紐解かれたのかはわからないが。
「したい」
結局言うはめになったけれど、轟くんの丸くなった瞳を見たら峰田への恨みは消えていた。もう、他の男のことなど考えられない。視界も体も、轟くんに染まっていく。
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