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「実は南雲さんと付き合ってたのは南雲さんを殺すためなんです」

 私は南雲さんに馬乗りになっていたが、それはセックスをするためではなかった。私の手は銃を握っていたし、私達の間には甘い空気なと漂っていなかった。

「知ってたよ? いいよ、殺して」

 南雲さんは銃など気にしていないかのように、平然と言ってみせる。私が南雲さんを殺せるはずがないと思っているのだろう。舐められている事実に、銃を握る手へ力が入る。

「僕を殺せるまで付き合い続けるってことでしょ?」

 南雲さんは笑顔でそう言った。南雲さんは私が暗殺のために付き合っていることに気づいていたのだ。その上で私に本気で惚れていた。単純なのか、それとも殺されない自信があるゆえの余裕なのか。

「流石に五年経ったら結婚はしたいかな〜」

 五年経っても私は南雲さんを殺せない。そう言いたいのだろう。流石に南雲さんの暗殺だけにそれほど時間を割くわけにはいかないし、私は任務から外されるはずだ。

「次の暗殺者と結婚してください」
「嫌だよ、君じゃなきゃ」

 殺し屋として侮辱されているはずなのに、それは愛の言葉のように感じられた。南雲さんが本当に私を好きなら、私から担当が変わらない内に殺されてくれるだろうか。南雲さんの思考はまったく読めない。