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 任務に南雲さんと私がセットで派遣されるようになったのは数か月前からのことだ。ORDERの南雲さんの下で学べという意図だろうが、南雲さんはほぼすべての任務を一人でこなしている。今日などは、標的が抵抗するから血しぶきが飛び散るのを私は見ていただけだ。血まみれの部屋で「ふう」と息をつくと。南雲さんは笑顔でこちらを振り返った。

「じゃ、ホテル行こっか」

 何が「じゃあ」なのかわからない。けれど私の中に南雲さんへの憧れは確かにあったようで――それは男女の情に変換できたようで――気付けば南雲さんと一緒に街中のホテルにいる。安っぽい内装の部屋の元、南雲さんはコートを脱いだ。

「先にお風呂いいよ」

「先に」。何の先にお風呂へ入るのかは聞くまでもない。ほとんど無意識にシャワーを済ませ、備え付けのバスローブを着た。南雲さんは私を見てきょとんとしたような顔をした後、まだ湯気の立つ風呂に入った。

「じゃあ帰ろうか」
「え?」

 南雲さんの風呂は烏の行水だった。いつの間に持っていたのか新品の衣服に着替えると、キーを持って出ようとする。バスローブ姿の私は一人置いて行かれている。

「やだなぁ、何勘違いしてるの? タトゥー入ってると公衆浴場には入れないからホテルにしたんだよ。ルールは守らなきゃね」

 私はそこで理解した。南雲さんはホテルへ行って致したいわけではなく、返り血を流したいだけだったのだ。私だけが勘違いしていた。「先に」は、南雲さんがシャワーを浴びるより先に私が入っていいよ、ということだったのだ。

 羞恥で赤くなる私に対し、南雲さんはにこりと笑いかける。

「あ、でも名前ちゃんのバスローブ姿は見れてよかったかも。期待させてごめんね?」

 少し前に流行った、可愛くてごめんという歌詞を思い出す。今の南雲さんはそれくらいあざとい。

「紛らわしいことしないでください!」

 急いでバスローブから着替えようとしたら、「ほら」と新品の衣服を渡された。私の分まで買ってあったのだ。それはいいのだが、何故下着まであるのだろう。ジャストサイズで揃えられている下着を見たら、本当に何もする気がなかったのか怪しくなってくる。