▼ ▲ ▼

 ブルーロックの職員である私と選手のカイザーが恋に落ちたのはカイザーが来日して数か月ほど経った頃だった。私達は翻訳イヤホンがなければ会話すらできないが、気持ちは通じ合っていると思う。初めは緊張しかけていたのも段々とほぐれ、遂に私達は初夜を迎えた。手荒いイメージのあるカイザーが手を出すまでに一カ月以上待つのは少し意外だった。

「いやっ、ダメ」

 カイザーの手が下半身に伸びると、私は口ばかりで拒否してみせる。それは殆ど癖のようなもので、本気で拒否しているわけではない。だというのに、カイザーは手を止めた。

「え?」
「拒否している女を無理に襲う趣味はない」

 カイザーは身体を起こし、もう今日は終わりだとばかりに静かな表情になった。日本語での喘ぎ声の定番である「嫌」とか「ダメ」は翻訳されればノーだ。そういえば、英語圏での喘ぎ声はイエスだと聞いたことがある。でも私がイエスと言ったところでイヤホンで翻訳されたら「はい、はい」と言っているようになってしまうのだろうか。

「いい、すごい気持ちいい、もっとしてっ」

 結果的に私は羞恥を噛み締め、そう喘いでいた。何の罪もないとわかっていながら、御影くんを恨まずにはいられない。喘ぎ声くらい、変換してくれてもいいものを。

 カイザーは再びその気になったようで、私に跨って笑う。

「ちなみにイエスはそのままイエスで入ってくるぞ」

 じゃあイエスでよかったのだ。もう何も口にしたくない気分だが、カイザーがそうはさせてはくれない。翻訳イヤホンがあろうと、国際カップルは難儀なものだ。