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 侑と二人で飲むのは特に珍しいことではなかった。大阪に出てきた者同士なのか、はたまたそれ以上のシンパシーを感じてか、私達はよい友達であると思う。そのことが、私を締め付ける。

「私好きな人いるんだ。全然私の気持ちに気付かなくて、私の好意を無下にするノンデリな奴」

 私が言い出したのは唐突だった。私達のテーブルに店内の軽いジャズ音楽が流れる。一瞬の空白の後、侑はそれまでと打って変わって血相を抱えた顔をした。

「はぁ!? そんな奴やめとけ! そんで俺にしろや。俺ならお前のこと幸せにできる」

 今まではいかに自分が優れているか、チームで活躍しているかを涼しい表情で語っていたのに、随分必死だ。いつの間にか告白まで始まっていた。侑はいつでも余裕ありげだから、「俺にしとけ」なんていう二番手のようなセリフを言うとは思わなかった。

「大体そういつ奴はかっこつけてばっかでダサいねん、必死こいて本気にならんかい」

 まあ酒でも飲まんと本気になれんのやろな、と言って侑はグラスの酒を飲んだ。私の好きな人の悪口を簡単に言ってしまうのも侑らしい。私に気に入られようとするならば、私の好きな人も尊重するべきだと思うのだけど侑にその考えはないのだろう。まあ、いずれにせよその人物は侑に怒ることも、対峙することもない。彼は双子以上に侑と近い存在だからだ。

「口説いてるところ悪いんだけど、その好きな奴って侑なんだよね」

 侑は目を丸くして黙り込んだ。それから自分が持っているグラスを見た。先程そういう奴は酒でも飲まないと告白できない、と言ったのを思い出しているのだろう。それから、自分が言った数々の悪口も。

「俺は俺をディスってたんか?」
「うん」

 侑は両手で顔を覆い、意気消沈しているように見えた。口説いていたはずなのに情けないと思っているのだろう。私達が両想いであるとわかった嬉しさより、羞恥が勝つようだ。

「今は何も言わんといてくれ」

 そう言う侑には悪いけれど、私はこれからの話をさせてもらう。だって私は、侑と付き合いたいのだから。