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 妊娠してから凛はぱたりとお酒を飲まなくなった。それが妊婦である私への配慮であることは明らかだ。気持ちは嬉しいけれど、凛のささやかな楽しみまで奪ってしまっていると思うと心苦しい。

「私に気遣わないで飲んでいいんだよ?」

 テレビを観ている凛にそう言うと、凛は一度視線をこちらにやった後またテレビに戻した。

「お前と同じことしてるだけだ」

 私と凛は二歳離れている。もし私がお酒を飲んでいて、テーブルに酒がある状態をマスコミに撮られたら大変だ。私は凛が未成年の間決して酒を飲まなかった。家でも、外でも。そうやって二人で会っているならもっと早く付き合えばよかったと思うけれど、当時の私達なりにタイミングというものがあったのだろう。凛はその配慮のお返しをしてくれているようだった。

「他の人は凛と一緒にいてもお酒飲んでたの?」
「俺はお前以外と外食しなかったから知らねぇ」

 確かに、凛はいつ誘っても予定は空いていた。断られるとしたら練習か試合くらいのものだったけれど、私以外に遊び相手がいないとは思わなかった。

「そんなに友達少なかったっけ」
「誘われても断ってた。どうせ途中で女呼ぶからな」

 その言葉に、「やっぱり私に気遣ってる」と私は笑う。途中で女を呼ばれるのが嫌で男同士の集まりに顔を出さないのなら、それは私への配慮に他ならない。その時私と付き合っていたかはわからないけれど、付き合っていなくても他の女を呼ばれるのが嫌だったのだろう。今更ながらに凛の一途さを感じる。その一途さが今、実を結ぼうとしている。