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「好きだよ、付き合って」

 電話越しに言われた時、私の心にあったのはときめきではなく呆れだった。今日はエイプリルフールだ。だからと言って、会いもしていないのにわざわざ電話をかけることはないだろう。余程私をからかいたかったのだろうか。

「はいはい、わかったわかった」

 私は適当に流して電話を切った。南雲は私にその言葉が言えれば満足だったのか、珍しく素直に電話を切られた。朝から災難に遭ったような気になりながら仕事の準備をする。今日は殺しの依頼が一件入っている。

「南雲も暇だよね、わざわざからかいに電話して」

 仕事をしながら殺連の後輩に愚痴れば、後輩は物珍しそうな顔をした。

「南雲さんは今海外だからそれなりに忙しいと思いますけど……」

 南雲のやつ、知らない間に海外へ行っていたのだ。海外からわざわざからかってくるなんてやはり奴の軽薄さは常軌を逸している。そう思うと共に、嫌な予感が押し寄せる。

「海外ってどこ?」
「確かアメリカだったような」

 その言葉を聞いた時、私の嫌な予感が的中したのを感じた。今日は四月一日、エイプリルフールだ。日本時間で正午。ということは、アメリカはまだ三月だ。南雲が電話をかけた時、奴がいる場所は四月一日ではなかったのである。

 だから出張を私に知らせなかったのかと思うと同時に、はめられたと思った。私はわかったからと流してしまった。つまり、付き合っていることになっている。今頃海の向こうで南雲が笑っていることを思ったら、無性に殴りたい気持ちになってきた。