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「賢者、おまえはアーサーと結婚しろ」

 突然そう言いだしたオズに、私は困惑した。私とアーサーは付き合っているわけではないし、お互いに恋愛感情すら抱いていない。オズがアーサーの結婚相手を見繕おうとするのは保護者的な感情なのだろうか。中央の国の王子と異世界からやってきた私が結婚できるとは思えない。それとも、オズなら細かいことをすっ飛ばして結婚させてしまえるのだろうか。

「オズ様、いくら何でも急すぎます」

 アーサーも困っているようだった。そもそも何で、オズは私とアーサーを結婚させたがっているのだろう。困り果てる私たちの元へ、フィガロがやってきた。

「あはは、オズは賢者様をアーサーと結婚させたいわけじゃないよ」
「どういうことですか?」

 結婚させたいわけではないのに結婚を勧める、とは何なのだろう。政治的な狙いがあるにしても、私に中央の国に影響を及ぼすような力があるとは思えない。

「オズはアーサーを愛している」
「フィガロ様」

 そんなことはない、とでも言いたげに言葉を発したアーサーをフィガロが右手で制した。場は再び静まり、誰もがフィガロの言葉を待つ。

「そんなアーサーの嫁にして一緒に可愛がりたいくらいなんだ。賢者様を好きなのは誰かな?」

 私は一つの可能性に気付いた。いや、でもそんなことは。頭の中で疑惑と否定を繰り返す私の横で、オズがフィガロに圧をかける。

「フィガロ、それ以上言ったら容赦しない」
「俺がいないと言葉も通じないのに?」

 どうやら怒っているらしいオズと、それを軽くいなすフィガロ。よくある構図だが、今回は私が巻き込まれている。

 私の勘違いでなければ、オズが好きなのは私であって、私をアーサーと結婚させるというのはオズのわかりづらい愛情表現だ。好いた相手を自分ではなく子供のような存在の結婚相手にしたいと思う人がいるだろうか。

 オズを見ると、ぱちりと目が合った後すぐにそらされた。どうやら私の予想は当たりらしい。