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「おい、これァ何だ」

 私が鞄からこぼしたシート。それを左馬刻はまるで浮気の証拠のように扱った。何故私はこれほど責められているのだろうと思いながら左馬刻を見上げる。

「ピルだけど……」

 左馬刻はピルのシートをくしゃりと手のひらで潰した。一応高い薬なのだけど、そんなことは関係ないらしい。ピルを飲んでいるからと言って不特定多数としているわけではないのに、何で左馬刻はこんなに怒っているのだろう。

「俺様が中出しするような無責任な男に見えてんのかよ。避妊なら男がゴムつけりゃ済む話だ。女が体張ってまで薬飲むことじゃねぇ」

 どうやら左馬刻は、ピルを避妊薬としてしか認めていないらしかった。私が避妊したくて飲んでいると思ったのだろう。私に無理をさせない所は義理深い左馬刻らしい。けれど、私は生でセックスをするために飲んでいるわけではないのだ。

「避妊のために飲んでるんじゃなくて、PMSが酷いから飲んでるの」

 左馬刻でも、PMSという言葉は知っていたらしい。複雑そうな表情になり、「何で俺に相談しなかった」と言う。相談するも何も、左馬刻が解決できるわけではないだろう。むしろ私は左馬刻に当たるまいと期間中左馬刻を避けてすらいたのだ。だが、その配慮は不要だったらしい。左馬刻は全力で私を甘やかそうとする。

「生理周期共有しろ。辛くなったら俺様を呼べ」

 左馬刻はスマホに生理周期管理アプリを入れた。男の人がそういうものを入れるのは抵抗があると思っていたけれど、どうやらそういうことでもないようだ。私は今、全力で左馬刻に守られている。むずがゆいような感触に襲われながらも、左馬刻の愛は温かい。