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凛が嫉妬深いということは、長い付き合いの中でよく知っている。最近在宅で職場の備品を家に持ち帰ることが多かった私は、それを先輩に届けることになっていた。業務外で、一応男性と会う。それが夜となれば、凛の機嫌を損ねるのは確実だろう。こういうことは前もって言っておくのが一番なのだ。
「職場の人に外で会うの夜になるかも」
用もあったし、電話のついでに凛に話す。凛は恨み辛みの言葉を吐くかと思いきや、案外淡々としていた。
「じゃあ家まで送ってもらえ」
「嫉妬しないの?」
普段の凛なら、職場の男性に家を知られるなんて死んでも避けろと言いそうなところだ。会社の外で会うことに反対するのは勿論、その場に自分も行くと言いかねない。
「お前の安全の方が大事だ」
私は素直にときめいた。自分の嫉妬心より、私の安全を優先してくれたのだ。凛がこれほど大人になっていたとは、と人知れず胸を打たれる。
どこか上機嫌のまま先輩との待ち合わせに行くと、用はものの数分で終わった。私が頼むまでもなく先輩は家まで送ってくれ、私は家のドアを開ける。
「それじゃあ、ありがとうございました」
私が家に入ろうとした瞬間、大きな影が現れた。私も先輩もその存在に圧倒される。凛だ。凛はまるで同棲しているような顔つきをして、「送ってくれてありがとうございました」と私の腕を引いた。私は呆然として何も言えなかった。凛が大人しくなったなど嘘だったのだ。直接顔を合わせて牽制する機会を狙っていた。顔を褒めていたら最近顔がいい自覚も出てきたようだし、自分の姿を見せるのが一番だと思ったのだろう。
「それじゃあ」
ドアが閉まる音がする。数か月前に合鍵を渡した時はまさか、同棲しているふりをされるなど思っていなかった。
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