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 家がなくなった。家賃を払えなくなったとか追い出されたとかではなく、言葉通りの意味である。殺し屋同士の戦いに巻き込まれた我が家は、骨組みも残らないほど無残な姿になっていた。

「どうしてほしい?」

 こうした張本人である南雲さんは私に笑いかける。南雲さんはいつも家を壊しているのだろうか。そのたびにこうやって迫っているのか。などと自分が嫉妬めいたことを考えていることに気付き、思考をシャットダウンする。南雲さんが少しでも責任を感じているのなら、私の家のことをなんとかしてくれるはずだ。

「南雲さん、殺し屋ってことは事故物件たくさん知ってますよね? 事故物件紹介してください」

 事故物件なら家賃が安く済み、費用がかさばらないはずだ。私は南雲さんの望み通り南雲さんに甘えた気でいたが、南雲さんはお気に召さなかったようだった。

「僕は不動産屋じゃないよ〜」

 いつもの笑みを浮かべながらも、怒っているということはわかる。南雲さんもまさか自分が事故物件紹介屋のような扱いをされるとは思わなかったのだろう。

「じゃあ他の人頼ります」

 私が言うと、引き留めるように「僕の部屋に住めばいいよ」と言った。まるで用意していたかのような答えに、素直に乗ることができない。

「セーフハウスの一つですよね?」
「僕が暮らしてる家だよ」

 その笑顔を見ながら、南雲さんが私の家を壊したのはわざとではないかと思えてきた。本当は家を大破しないことも事故物件を紹介することもdきるのに、私を家に引き入れるためにすべてのことをやっていたのではないかと。気付いたところでどうしようもない。私は南雲さんの手のひらの上で踊るしかないのだ。