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「どうして口で言わない」

 本部に赴いたある日、私は好きな人に詰め寄られていた。場所はラウンジで、辺りには大勢の人がいる。二人で話しているだけで何か言われそうなのに、ヒュースと話して照れている姿を見られたらたまったものではない。私はできるだけ簡潔に話を終わらせようとした。

「何の話?」
「恋文だ。お前が文字で書くせいで俺は読めずに迅に読み上げてもらうことになった」

 私の体が熱くなる。私は先日、ヒュースに告白をした。直接言う度胸がないから手紙にしたのだ。だってまさか、ヒュースが日本語を読めないなど思わないではないか。

「え、じゃあ迅さん私の気持ち知ってるの?」

 遅かれ早かれ未来視で知られていたかもしれないが、迅さんは直接私の手紙を読んだ。私が先程とは別の羞恥を抱いていると、「そこで照れるな」とヒュースが鋭く切り込んだ。

「お前が口で言ってくれば誰にも聞かせずに済んだものを、紙などにしたためたせいでよりによって迅に聞かれた」
「告白なんかして、ごめん……」

 私は思わず謝る。これならまだ直接告白してフラれた方がましだった。ヒュースは相変わらずの無表情で腕を組んだまま私を見下ろす。

「それは別にいい。問題はどうやって迅の記憶を消すかだ」

 流石にボーダーの記憶封印装置を使うわけにはいかないだろう。迅さんのことは諦めてもらうしかない。

「私がフラれた件は内密にしてくださいって言っておくから」

 私が言うと、ヒュースは不服そうに眉を上げた。

「何を言っている? オレはお前と付き合う」

 え、と思わず声が漏れた。私の告白は成功していたのか。迅さんにラブレターを見られたこともどうでもよくなってしまう。多分迅さんは、この未来が視えていて手紙を読み上げたのではなかろうか。だって私は、今ヒュースに嫉妬されて喜んでいる。迅さんの記憶を消す話をしているヒュースには悪いが、私はもうヒュースのことしか考えられなかった。