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「何で教えてくれへんかったん?」

 私は今、恋人の侑に詰問されている。侑は見るからに不機嫌という様子で眉を顰め、私を恨めしげに睨んでいる。

 発端は病院へ行くのに保険証を取るよう頼んだことだ。生年月日を見た侑は、今まで自分が認識していた私の誕生日が一日ずれていることに気付いた。それで病人相手に睨みをきかせているわけである。

「折角祝ってくれてるのに指摘するのもアレかなって……」
「間違えてた俺がアホみたいやないかい!」

 その通りだよ、という言葉を飲み込む。毎度毎度ずれた日に祝う侑へ私は何度正そうとしたことだろうか。結局得意げな侑を見たら何も言えなくなってしまい、侑は二十回近く違う日に私の誕生日を祝った。

「他の奴らはちゃんと誕生日に祝ってたんか」

 他の奴ら、とは高校で一緒だったメンバーや侑と同じく幼馴染の治のことだろう。

「うん。治とかは」

 一番手近な例として治を挙げたのだが、侑の地雷を踏んでしまったようだった。侑は治に負けることを酷く嫌う。

「祝い直しさせろ! お前の風邪が直ったら、それでええ!」

 気持ちは嬉しいが、二十回近い誕生日をまとめて祝い直すとは何をするのだろうと思ってしまう。確か付き合い始めてからは「俺がプレゼント」なんてこともあったはずだ。要するにしたいだけではないのか。そう思っていた私は、侑が部屋の飾り付けも衣装も凝り、出し物のお笑いまでやることに驚くこととなる。侑の私への愛は、それほど大きかったということだ。