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「実は名前ちゃんとするのこれが初めてじゃないんだよね」

 南雲さんがそう言いだしたのは、私達が初めて体を重ねた時のことだった。行為を終えて横になり、天井を見上げながら余韻に浸っている。南雲さんの一言はその雰囲気を壊すのに十分だった。

 初めてではないと言われても、私にとってこれが南雲さんとの正真正銘の初めてだ。私が意識していない間にしていたとなれば、睡眠中か。

 南雲さんと付き合う前ならそう確信できただろうけれど、これだけ丁寧に抱く南雲さんを見てからではどうも腑に落ちない。果たして南雲さんが、そんな強姦のような真似をするだろうかと。

「敵組織が名前ちゃんに変装して近付いてきたことがあってさ、体も似せてるみたいだから抱かせてもらった」
「は!?」

 予想の上を行く返答に、私は思わず声を出した。この様子では、私ではないと気付いていながら抱いたのだろう。

「ごめんごめん。だって名前ちゃんのこと好きだったんだもん。好きな子を擬似的に抱けるってなったら抱くでしょ?」

 南雲さんが謝るものだから、私が嫉妬しているような形になっている。確かに私を好きでありながら私以外に愛を囁くことがあったのかと思わないでもないけれど、なんだか癪だ。それに、どうして敵は私の格好をして近付いたのだろう。

「何で私に変装なんか」
「僕がナマエちゃんを好きなのは有名な話だから」

 南雲さんはさらりと言ったが、そうなると話は変わってくる。南雲さんは外堀を固め、まるで誘導するようにして私と付き合ったのではないかと。私が自分でしたと思っていた判断は、私がしたものではなかったのかもしれない。