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2025/4/25時点で本誌微ネタバレ
私と南雲さんと神々廻さんが密会場所に選んだのは、街のラーメン屋だった。女一人でラーメン屋に来るのは逆に目立ってしまうが、元々は南雲さんと神々廻さんの密会に私も追加される形となったので仕方ない。
私達はそれぞれ一人客のように振る舞い、ラーメンを食べているふりをして情報を交換した。周りにいる客には、店内にかかっているテレビの音が大きくて聞こえていないだろう。
必要なやりとりをすべて終え、一番先に立ち上がったのは神々廻さんだった。
「じゃあ俺先出るわ。気付かれんようにな」
視線だけやれば、ラーメンも完食している。財布を出す神々廻さんに、南雲さんが声をかけた。
「待って。神々廻名前ちゃんの分も払おうとしてない?」
「そら払うやろ」
神々廻さんは当たり前のように言っているが、おかしな話である。私達は別々で来ている設定なのに、会計をまとめられては知り合いだと悟られてしまう。それか、神々廻さんはラーメン屋で「あちらのお客様からです」をやろうとした痛い客になってしまう。
「私達一応別々で来てる前提なのに会計まとめるのおかしくないですか?」
私が言えば、「俺が払うのは苗字の分だけや。南雲は自分で払え」と神々廻さんは財布から紙幣を取り出した。
「そういうことじゃなくて」
「名前ちゃんの分は僕が払うよ」
「俺が払う」
何故、ORDERと元ORDERで私の会計を誰が払うか揉めているのだろう。私も一応一人前の大人だし、自分で払えるのだけど。どうして南雲さん達は頑なに私の分を払おうとしているのだろう。
顔を合わせないまま口論していた二人だったが、近くに他の客が来た瞬間すっと一人客の雰囲気に戻った。結局私の会計は神々廻さんが払った。先に出て行った神々廻さんには秘密と言うように、「じゃあ今度は僕が奢ってあげるから次の店行こう」と南雲さんが視線を合わせないまま言った。もう情報交換は済んでいるのに、南雲さんと会う意味はあるのだろうか。
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