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「交際相手の方は何をされている方ですか?」
「モデルです」

 飛雄が出ているインタビューを、私はぼうっと眺めていた。飛雄と私は高校を卒業してから付き合い始めて今年で一年になる。しかし、そう思っていたのは私だけのようだ。画面で、飛雄は自分の恋人を「モデル」と称している。私は平凡な大学生で、とてもではないがそんな華やかな職業ではない。飛雄は私の他に、本命の彼女がいたのだ。

 それから、飛雄の連絡はすべて無視した。モデルの彼女がいるのに、どうして私に構うのだろうと思う。私と付き合っているふりをしたところで、何もいいことはないだろうに。

 飛雄を無視し始めて数日が経った時、部屋のインターホンが鳴った。画面を確認せず出たことを私は後悔することになる。ドアの先にいたのは、飛雄だった。

「おい、何で電話出ねえんだ」

 まるで私達が電話することが当たり前のような口ぶりだ。私とは、付き合っていないと思っているくせに。

「そっちこそ忙しいのに何でわざわざ私の家まで来るの」
「会いたいんだからいいだろ」
「モデルの彼女がいるのに?」

 思わず口論のような口調になり、一番言いたかったことが出てしまう。これを言わなければ、私は飛雄の彼女と思っているままでいられたのかもしれない。ならいい、と飛雄は出て行くだろうか。覚悟を決めて見上げると、そこには変わらない様子の飛雄がいた。

「だからお前だろ」
「は?」

 思わず間の抜けた声が出てしまう。私はモデルなどではない。一体飛雄は、何を勘違いしているのだろう。

「この前モデルやったって言ってただろ」

 その一言で、数か月前飛雄に話したことを思い出す。美容院で誘われて一時的にやったカットモデル。確かにモデルと名はついている。

「あれはカットモデル! 少し雰囲気よければブスでもなれるの! 雑誌のモデルとは全然違うから!」

 美容系に疎い飛雄は、カットモデルをモデルだと思い込んでいたらしい。本物のモデルの方に土下座したい気分である。飛雄はと言えば、自分の過ちを認めるでもなく「お前はブスじゃねえ」と言った。

「そこ今どうでもいいから」

 飛雄は、私の他に彼女がいるわけではなかった。マスコミがモデルの誰かとの熱愛をスクープしようと張っているだろうことを考えればよくはないのだけど、まあよかった。

「とにかく訂正しておいてよね」

 そう言って私達は一度解散した。部屋に入った私は力が抜けてベッドに倒れ込む。まさかこの時の私は、飛雄がテレビでこう語るなど思ってもいなかったのだ。

「苗字名前さんと付き合ってます」

 相変わらず、この男には常識が抜けている。