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私が降谷さんに告白する方法としてラブレターを選んだのは、面と向かって告白する度胸がないからだった。私は降谷さんのデスクに手紙を仕込み、反応を待つ。降谷さんならきっと私が残した違和感に気付くだろう。
降谷さんは私を呼び出すでも返事を書くでもなかった。手紙を出したまま一週間ほどが過ぎた頃、降谷さんと私はオフィスに二人残されていた。もしかしたら降谷さんは、仕事が終わっていたけどわざと残っていたのかもしれない。他に怪しまれずに二人きりになるのは降谷さんらしかった。
降谷さんは他に人がいないことを確かめ、私が書いたラブレターを取り出す。やはり気付いていたのだ、と私の胸が高鳴る。降谷さんが言ったのは、返事でも甘い言葉でもなかった。
「僕達の仲は公然にできないんだから証拠を残すな」
なんとも降谷さんらしい正論である。私が降谷さんを好きなことを悪者に知られたら、その情を利用されるかもしれない。私が人質にとられたせいで降谷さんが動きを躊躇う、ということはないのだろうけれど。
降谷さんはライターを取り出して手紙を燃やした。一見すごい脈なしのように思えるけれど、ライターの明かりに照らされる降谷さんの顔が穏やかで、もしかしたら脈があるのではないかと思った。
「返事は……」
「オーケーだよ」
ライターの火が消えて、燃えかすが床へ落ちる。降谷さんは告白方法を否定しただけで、私の気持ちまで否定したわけではなかったのだ。
「証拠が残らなければいいんですか?」
顔を上げた降谷さんに、私はキスをした。キスをしても証拠は残らない。乗り出していた身を元の椅子に戻すと、「僕からさせろよ」と降谷さんが手を伸ばした。
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