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ニュースで米の価格高騰が報じられて久しい。私のスマートフォンは、画面にかつての先輩の名を表示した。
「米足りてるか?」
高校の先輩であった北さんは、私にお米を供給してくれる。それは私に気があってのことなのだろう。在学当時の北さんの振る舞いや、親戚でもないのに米を分けてくれるところに私は薄々勘付いていた。北さん自身もバレていいと思っているのかもしれない。北さんからお米を貰えることは、この物価高に有難いことだった。しかし、私は米目的に北さんと付き合いたくなかった。
「私のこと好きならちゃんと口説いてください」
米を持ってきた北さんに私は告げる。北さんは、お米が重いからと私の自宅まで届けてくれる。そのくせに部屋の中には上がらない。北さんは目を瞬いた後、口元だけで笑った。
「まさか俺が他の人にちゃんと言われるとはな」
上から目線になってしまったかもしれない。縮こまる私に、北さんは「ええで」と言った。そして米をだしにして会おうとするのではなく、好意を言葉にした上で、私に会いたいと言った。私はこの日、初めて北さんを自宅に上げた。
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