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「私の短所ってどこだと思う?」

 自室にて、履歴書を書きながら凛に尋ねた。幼馴染の凛は気まぐれに私の部屋にやってくる。サッカーの練習があって疲れているだろうに、物好きなことだ。凛のように打ち込むものがない私は、バイトを始めようと思っていた。履歴書と面接対策、どちらも凛には縁のないものである。

「それを言う嫌われ役を俺に押し付けるのか」

 凛は嫌そうな顔をした。その表情ができるなら短所を言うくらいわけもないと思うのだけど、凛にとっては避けたいことらしい。

「いつも憎まれ口ばっかり言ってるじゃん」

 私が言うと、凛は私の手から履歴書をひったくった。ペンをとり、何やら書き込んでいる。一応本番用の紙なので一枚無駄にしてしまった。私がそう考えている時、凛は書き終えた履歴書を私に突き出した。

「鈍い所だアホ」

 そう言って部屋から出て行ってしまう。見てみれば、備考欄に「将来はサッカー選手の妻になって支えようと思っているのでこの職場は長く続きません」と書いてあった。短所は言わずもがな、そういう凛の気持ちに気付かない鈍い所なのだろう。

 こんな書き方をして受かるはずがない。だけど、私の中でもうバイトをしたい欲求は低くなっていた。代わりにあるのは、素直でない幼馴染と学生らしく青春を過ごしたい気持ちだった。

 今追いかけたら、凛は怒るだろうか。私もLINEで凛に返事を送ることにする。直接言えと言われても、履歴書で私に想いを告げた凛に言われる筋合いはない。