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「は?」

 恋人の神々廻さんの家にお泊まりをするとなった時点である程度は覚悟していたことだった。しかし、あからさまに驚いていると言うような神々廻さんを前にすると、やはりショックを受ける。

「すっぴんを見せた時の反応がそれって悲しいんですが……」

 風呂上りの恋人同士というのは、もっと甘いものではないだろうか。私は神々廻さんの隣へ腰かける。

「この顔の傷、いつできたん」

 私の顔には神々廻さんと同じような位置に大きな傷跡がある。今まで隠せていたのはファンデーションのおかげだ。お揃いだと喜んでくれるわけではなかったらしい。流石に楽観的過ぎただろうか。

「前に任務でしくじって」

 神々廻さんは視線をよそへやり、考え込むような姿勢を見せた。

「俺と知り合う前やろうけど、自分の女守れなかったみたいで自信なくすわ」
「神々廻さんも顔に傷あるじゃないですか」

 私が言うと、神々廻さんは「男はええねん」と言った。男は女を守るべきとか、女は顔に傷をつけてはいけないとか、そういう古いジェンダー論に囚われているのは少し意外だ。これも四ツ村さんの教えなのだろうか。

 とりあえず、私が顔に傷をつけたのは私の不注意のせいであり、神々廻さんは悪くない。本気で落ち込んでいるらしい神々廻さんをどう励ますべきかと考えた。

「私も隠すのやめてお揃いにします」

 もう神々廻さんにバレてしまったのだ。これ以上周りに隠す必要もない。今度こそお揃いを喜んでくれるかと思いきや、神々廻さんは私へ手を伸ばした。

「それは嫌や。俺だけが知っとるんがええ」

 神々廻さんについて知ったこと。意外と考えが古くて独占欲も強い。神々廻さんと付き合わなければ知らなかったこと。私だって、神々廻さんについて私だけが知っていることをもっともっと増やしたいと思う。

 神々廻さんは私を引き寄せて優しくキスをした。その時、私達の傷跡と傷跡は完全に重なった。