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「誕生日楽しみにしてろよ」

 私の誕生日を前にして、玲王は得意げに言い放った。誕生日を全力で祝うところや、祝うことを事前に告げてハードルを上げてしまうところが玲王らしいと思う。恐らく、私の想像を超えてくる自信があるのだろう。玲王のことだから、どこかのホテルを借りてパーティーなどやりかねない。私が驚くとしたら、そのパーティーに有名アーティストが呼ばれていることなどだろう。そこまでしなくていいと言ってもやるのが玲王なのだから、もう止めはしない。恋人として受け入れるつもりでいた。

 誕生日当日、私は所用で渋谷を歩いていた。夜は玲王と過ごす予定になっている。その前に美容院やら何やらを済ませる必要があったのだ。

 信号が青に変わって歩き出そうとした時、急にビルの電子広告が変わった。その内容に、私は歩くことすら忘れて立ち止まる。そこには私の顔写真と名前、それから「誕生日おめでとう」の文字があったのだ。

 電話がかかってきた。無意識のうちに通話ボタンを押して耳に当てれば、相手は玲王だった。

「驚いたか?」

 その言葉で、玲王がやったのだと合点する。渋谷のど真ん中に誕生日広告を出せる人など玲王しかいない。よくアイドルか何かのファンの人達がお金を出し合って応援広告を出すとは聞いたことがあるけれど、一般人相手にやる人などいないだろう。

「こんなにお金かけなくていいから!」

 私が言うと、玲王は嬉しそうに笑った。

「サプライズってな」

 私の周りでは、「あの広告何?」「誰?」という声が聞こえてきている。我に返った私は急いで信号を渡り、SNSを開いた。そこには私の名前がトレンド入りしていた。広告を見た人が呟いただけではない。恐らく玲王が、トレンド欄にプロモーションとして挿入したのだ。

 どこまでも派手な祝い方に降参する。こんなに大勢の人に誕生日を祝われたのは、生まれて初めてだ。