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「え?」
ファデュイを辞めて一年。私はテイワットの僻地で暮らしていた。そこへ突然スカラマシュが一人で訪れるのだから、私を始末しに来たと思うのは当然だろう。
「私を殺しに来たんですか?」
スカラマシュは無表情のまま言った。
「違う。僕もファデュイをやめた」
「どうして」
「お前が知る必要はないよ」
そうしてスカラマシュは私の家にずかずかと上がり込んだ。中を調べるのかと思ったら、そのまま寛いでいる。スカラマシュは私の元で暮らす気のようだった。スカラマシュは私の元上司であり、ファデュイの執行官だ。でももうファデュイですらないのなら、顔馴染みの二人で暮らすのも悪くない気がした。
スカラマシュと私は穏やかに生活した。畑で野菜をとり、星を数え、夜が訪れたら眠った。殺戮をしていたスカラマシュとこんな平和な暮らしができるとは思ってもいなかった。
「でも私嬉しいんです。あなたが私の所に来てくれたのが。ただファデュイを辞めた者同士で庇いあって暮らすためだとしても、私以外にも辞めた人はいるし」
日光に当たりながら私は言う。スカラマシュが私の元へ来たのは、ファデュイを辞めた者同士結託した方が楽だからだとわかっている。それでもファデュイを辞めた者の中で私を選んでくれたのが嬉しかった。冷徹そうに見えたスカラマシュは、きちんと部下として私のことを認識してくれていたのだ。
「庇いあうためなんかじゃない」
スカラマシュは反抗するような意思を声色ににじませた。
「僕は辞めた者同士で一緒にいるために来たわけじゃないよ。君を好きだから、一緒に暮らしているんだ」
それはかなり大きなカミングアウトだった。スカラマシュには恋愛感情があって、私に向けられているのだ。私はスカラマシュなら受け入れるだろう。恋人として、一緒に暮らしてもいいくらいに。
「それを聞いても一緒に暮らし続けるだけで大して変わらないじゃないですか」
「だろうね。だから言わなかったんだよ」
恋人になったら一緒に暮らす。でもそれはもうやっている。つまるところ、私達の生活は変わらないのだ。私達の緩やかな生活は続いて行く。あの頃からは、想像もできなかったくらいに。
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