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朝練を終えて教室に入った時、苗字が占いのようなことをしていた。雑誌を見て学んだのか何なのかはわからないが、苗字と話せるきっかけがあるなら当然俺も行く。
俺が苗字の机の前に現れたのを見て、苗字は一瞬背筋を正した。それから俺の手相を見る。
「今日恋愛運高まってるよ!」
「そうか」
手相で日ごとの運勢が見えるのかどうかはわからないが苗字が言うからにはそうなのだろう。俺は苗字の元を去り、適当な女子を探した。ちょうど近くにいた女子に声をかける。
「俺と付き合ってくれないか」
その女子が面食らうよりも、圭が俺を引っ張る方が早かった。
「ちょっと葉流ちゃん何で知らない女子に告白してんのさ! 名前ちゃんが好きなんじゃなかったの?」
一応俺の気持ちに配慮してか、圭は小声だ。俺は圭に合わせて屈む。
「でも苗字が恋愛運高まってるって言うから、苗字の占いを外したくなくて」
「そんなん自分を意識してほしくて言ったに決まってんでしょ!」
俺は目を瞠った。苗字は、苗字自身との恋愛フラグが立ってほしくてそんなことを言ったのだ。苗字の占いが外れたら可哀想だ、なんて気を遣う必要はなかった。
「悪い、お前とは付き合えない」
俺は先程の女子に言って苗字の方へ歩き出す。
「いっけー! 葉流ちゃん!」
圭が両手を突き上げて応援してくれていた。一方で、勝手に告白されて勝手にフラれた女子は呆然としていた。彼女に関しては、本当に申し訳ないと思う。でも、これから俺が苗字に告白するのを見たら大体は理解するのではないか。苗字を人気のない所に呼び出して告白するような選択肢は俺の中になかった。俺は苗字に向き合って、息を吸う。
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