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任務で大怪我を追った後、南雲と会うのは勇気が必要だった。一応私達は恋人であるし、南雲は時折私に執着のようなものを見せる。怪我をさせた相手を殺しに行く、などと言い始めたら大変だ。しかし予想に反して、南雲は呑気そうに私を眺めるだけだった。
「大変そうだね〜」
「任務で肋骨折れちゃって……」
「ふーん」
思ったより淡々とした反応に拍子抜けする。怪我をした心配というのもないらしい。まあ、恋人同士でもプロ同士であるのだから当然と言えば当然だろう。
私はどこか安心してまた任務に出た。だからと言って怪我をしていいわけではないのだけど、私はまた傷を作ってしまった。今回は大怪我ではなく、軽い火傷だ。肋骨を折った時に何も気にしていない風だった南雲は、火傷くらいでいちいち気にしないだろう。
恋人として南雲に会いに行くと、顔を合わせて早々に首筋をつうっとなぞられる。
「何? これ」
「何って、ただの火傷痕だけど」
うるさくなった心臓の音を隠すように私は言う。
「本当に火傷痕? 誰にやられたの?」
南雲の目はどこか妖しい光を孕んでいる。この怪我を気にしているようだ。何故肋骨骨折は気にしないのに、少しあぶった程度の火傷は気にするのかがわからないが。
「任務で捕まった時に首元を火であぶられかけただけ。すぐに脱出したからそんな激しい火傷じゃないよ」
そう言った私に、確信に迫るように南雲がずいと顔を近付ける。
「キスマークじゃなくて?」
南雲が気にしていたのはこれだったのか、と理解した。火傷痕は確かにキスマークに見えなくもない。プロとして私が怪我を負うことは仕方ないと看過できるが、恋人としてキスマークをつけられるのは見過ごせないのだろう。
「そんなわけ」
「どっちにしろ体に痕つけられるとか甘いよね」
「いたっ」
南雲は悪戯に笑って私の火傷痕をつねった。傷跡の上にやるとは容赦がない。
「早く強くなりなよ」
南雲は余裕そうにしている。自分は強くてもすぐに嫉妬するくせに、とは言いたくても言えなかった。
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