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「好きです」
私は人生をかけた一大告白をした。場所は寮の裏手。轟くんは私に呼び出された時点で内容を理解していたかもしれないけれど、私が話すまで無表情を保っていた。私が告白をしてもなお、真顔だった。
「俺も好きだ。でもすまねぇ、今日は断ってもいいか」
「え?」
好きだと言われたこと。断ると言われたこと。それらが繋がらなくて混乱する。私は振られたのだろうか。それとも両想いなのだろうか。戸惑う私を置いて、轟くんは背中を向けてしまう。
「明日また告白してくれ」
私にはもう一度チャンスが与えられたということだ。もう一度告白するなら、バリエーションを変えるべきだろうか。もしかして、私のことは好きだけど告白の仕方が気に食わなかったとか。
翌日同じ時間に同じ場所で集合し、私は恥を忍んで叫んだ。
「大大大大大好きです!」
轟くんの基準としてどこからがオーケーなのかわからない。もっと可愛く、もっと必死にと何度でもリテイクされてしまうのかもしれない。
顔を上げると、轟くんは私の勢いに不思議そうな顔をしていた。
「? いいぞ」
「えっと……何で……」
どうして今日はそれほどあっさり、告白をオーケーしてくれるのだろう。轟くんは白状した。
「昨日は父の日だっただろ。そういう日を記念日で祝いたくねえんだ。悪かったな」
「あ……うん……」
私は呆然と返事をした。轟くんは私と一年以上付き合う気でいるのだ。別れる気があるわけではないけれど、轟くんの真剣さに嬉しくなる。轟くんがふっと顔を緩めて私に手を差し出した。それが手を繋ぐことの合図だと気付くのに数秒かかった。
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