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「俺も好きです」

 私は影山くんに廊下に呼び出され、告白のようなものを受けていた。何か別の「好き」なのではないかと思うが、目の前の影山くんは切羽詰まった表情をしている。これが男女の間の好きで間違いはないだろう。

 影山くんから告白を受けるだけならまだしも、私を動揺させているのは影山くんが「俺も」と言ったことだった。私は影山くんに告白しただろうか。私の記憶が定かであるならばしていない。それとも影山くんは、遂に私の心まで読めるようになってしまったのだろうか。

 考えを巡らせている最中に、教科書を借りたお礼にキットカットをあげたことを思い出した。最近のキットカットには、デフォルトでメッセージがついている。私があげたそれには、「大好き」と書かれていたはずだ。影山くんはそれを告白と認識したのだ。

「チョコのあれは元から書いてあるパッケージだから」

 私の思考が読み取られていたわけではないことに安堵しつつ、私はようやく落ち着いて影山くんと向き合う。影山くんはわかりづらくも表情の変化を浮かべた。まるで少し落ち込むかのような。

「じゃあ嘘だったんですか、すみません」
「嘘でもないけど!」

 思わず叫んだ私に影山くんが目を丸くする。

「どっちですか?」

 告白してきたのは影山くんなのに、何故私からこの言葉を言わなくてはならないのだろう。これなら、キットカットの言葉が告白だと素直に受け入れてしまえばよかった。でもこうなったら言うしかないのだろう。

「好き!」

 半ばやけに告げられた言葉は、影山くんの表情を明るくした。