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「私のことを振ってくれませんか」

 そう寂雷先生に言われた時、私は混乱した。私達は付き合っていないし、告白されたわけでもない。今から告白されるのかもしれないが、それにしたってどうするかは私に選択権があるはずだ。

「一体何で?」

 寂雷先生はその長い髪を撫でた。

「この髪を切りたくなりました。どうせ色々聞かれるなら失恋ということにしておいた方がいいでしょう」

 寂雷先生のようなまめな人でも、長髪の手入れが面倒になることがあるものなのだ、と思う。寂雷先生は長年髪を伸ばしていたし、確かに突然切ったら周りにつっこまれるだろう。それでも「面倒だから切った」と言えばいいはずだ。

「私はただ巻き込まれてるだけじゃないですか。普通に切ればいいのに」
「もう長年切っていないもので。何かしら理由が必要かと」

 寂雷先生が髪を伸ばしているのはここ数年の話ではないらしい。私が出会う前から、ずっと長髪だったのだ。いよいよ責任重大になってきた。そもそも髪を切る理由に失恋を選び、私に振らせようとする寂雷先生は私のことが好きなのではないか。あまりに堂々としているから見落としがちだが、周りに私に振られたから髪を切った、と言って自分が私を好きだとアピールしておくことが狙いの可能性もある。寂雷先生の想い人となれば私に寄る人も減るだろう。髪を切りたいということこそ実は言い訳なのかもしれない。

「告白してくれなきゃ振れません」

 私を巻き込むなら告白の一つくらいしたらどうなのだ。そんな思いで言えば、寂雷先生は「いいでしょう」と目を細める。

「あなたが好きです」

 振らなきゃいけない。でも振ったら、寂雷先生の計画が始動してしまう。私が寂雷先生の告白を受け入れたいと思っているのは寂雷先生への対抗心なのか、寂雷先生の告白に純粋に心動かされたからかわからなかった。