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彼女に呼び出されて、告白などあるわけがないと思っていた。その中で少しでも期待した僕が馬鹿だったのだ。
「南雲くん変装できるでしょ? だからお願い、Aくんに告白する練習に付き合ってくれないかな」
目の前の彼女は照れや恥じらいを含んだ表情をしている。それらがすべてAに向けられているのだと思うと、僕の心は荒波を立てた。僕に頼ってくれているのは嬉しい。それが僕以外のためだと思うと、複雑な気持ちになる。
断ればいいのに、結局やってやっている僕は愚かだ。Aに変装し、彼女の前に立つ。
「Aくん、好きです」
ああ、彼女に告白されたらこんな気持ちなのだ。僕の中のどこかが満たされ、どこかには穴が開く。目の前の彼女の視線が向いている先が僕ではないということがもどかしい。
僕は我慢できずに彼女を抱きしめた。これからの言い訳など、考えていなかった。
「南雲くん……?」
彼女が戸惑いがちに声を出す。僕の口からはするするとそれらしいことが出てきた。
「練習なんでしょ? こうやってAくんが抱きしめてきたらどうするの」
「そしたら……こうする」
彼女も僕を抱きしめ返した。僕達はまるで気持ちが繋がっているかのようだった。この瞬間だけ、僕はAになれているのだ。あまりに長い間抱きしめていたからか、少し戸惑いがちに彼女が離れる。
「練習に付き合ってくれてありがとう! お礼しなきゃね」
もう僕は南雲でAではない。僕は自嘲気味に笑った。
「もう貰ったよ」
本来するはずのなかった抱擁を。
「頑張ってね」
去り際に手を振って、僕は彼女の前を離れた。ずっと告白する勇気が出なくて、僕に練習を頼み続ければいいのに、と思った。
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