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冴がマンションを買った。場所は都内中心部、セキュリティ万全のマンションの最上階だ。冴としては大したことない買い物なのかもしれないが、流石に額が額だ。日本にいないことが多い冴はここまで豪華なマンションを買う必要があっただろうか。せめて賃貸でもよかったはずだ。

「しょっちゅう海外行ってるのにマンション買ったの?」

冴は出国ゲートにて私を振り返り、無感情に言った。

「じゃあその間お前住むか」
「え!? いいの!?」

冴が買うような豪華なマンションに住めるならそれに越したことはない。「ああ」と言った冴を見送ってから、私は冴のマンションに移動した。まだ暮らしている様子はないものの、家具や家電は一通り揃っている。私は着替えや日用品を持ち込み、しばらくの豪華な生活を楽しんだ。部屋の窓からは東京タワーが一望でき、気分はまるでセレブだ。

だが、冴がマンションを買ったことを知っているのは私だけではなかったのである。どこからか冴の日本の自宅を嗅ぎつけたマスコミが、冴のマンションに入る私を見開き記事で報じた。タイトルは「日本の至宝、通い愛」。私は発売された雑誌を見て呆然とした。冴が不在なのに熱愛を報じられるなど思っていなかったのだ。
さらに私を驚かせたのは、記事を受けて質問された冴がこうコメントしたことだった。

「同棲している恋人です」

気付けば私は、週刊誌からも冴からも恋人認定されている。もちろん、付き合っているわけではない。どうしたものかと思って凛に相談すると、凛は短く告げて電話を切った。

「アイツにはめられたんだよバカ」

冴には、週刊誌の動きすら予測できたというのか。それではまるで冴が私を好きみたいだ。いや、家を貸すくらいの仲である時点で私は冴の特別だという自覚はあったのだけど。

震える手で冴に電話をかける。冴はいたって平常通りだった。

「ただで家貸すわけねえだろ。俺が帰ってきたら同棲だ」

私だけが何も知らないまま外堀を埋められていた。好きも、付き合ってほしいもない。私達が両思いだということは薄々勘付いていたからいいのだけど、それにしても手口が乱暴すぎる気がする。冴に反抗するにも私は既に自宅を引き払ってしまい、おまけに冴が好きでもある。私はすべて、冴の手のひらの上なのだ。