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「よし」

 敵が見回りから去って行った瞬間、拘束する縄をいとも簡単に抜けた南雲さんを見て度肝を抜かれる。私達は任務にやってきて、失敗して捕まったはずだ。逃げられないからこそこうして捕らえられていたのに、南雲さんはいつでも逃げ出せたというのか。

「何してるの? 早く名前ちゃんも抜けなよ」

 当たり前にできるだろうと言うように、南雲さんは私を見下ろす。

「それができたらとっくに逃げてるんですけど……」
「そうだったねー」

 笑った南雲さんを見て、嫌味かと思った。そもそも、何故南雲さんはわざと捕まる真似をしたのだろう。自分で縄抜けをできるなら、捕まらないようにすることもできたはずだ。南雲さんほどの実力者なら、捕まる私を助けることも。

「あの、一応聞くんですけど何で捕まったままでいたんですか?」

 南雲さんは武器も使わず私の縄をほどく。

「じゃないと名前ちゃんと二人きりになれないでしょ?」

 それが当たり前であるかのような言い方だ。南雲さんにとって、敵に捕まることなど何でもないのだろう。少しコーヒーショップに寄るような感覚で敵に捕縛される。目的は私と話すことだ。強者というのは何を考えているのかわからない。それなら殺連で普通に話しかけてくれればいいものを、と思ったが、私は殺連で南雲さんを無視していたような気がする。

「一緒に任務行くようにしたのも僕の仕込みだよ〜」

 何もかも、南雲さんの手のひらの上だったのだ。私は縄をとって立ち上がった。まだ足が痺れている。捕縛からは逃げられたものの、敵組織のアジトを脱するにはそれなりに戦わなくてはならない。

「じゃあ早く片付けちゃおうか」

 武器を構える南雲さんを見て、不覚にも格好いいと思ってしまった。彼は私と二人きりになるためだけにわざと捕まるような人なのに。今度殺連で南雲さんに会ったら、もう無視はやめようと思った。私の身に危険が及ぶからなのか、南雲さんを見直したからなのかわからない。